野人と行く限界ギリギリの無謀な旅 第5部 【利尻岳】Day 2 花咲き誇る美しき利尻岳の光と闇
【前回のあらすじ】
北海道の山を周回するべく夏休みを取った北千住山部一行は、当初の予定から変更を重ねつつ利尻島にたどり着いたのであった。
前日の祭りの熱も冷めやらぬ我々はふんどしに祭りのはっぴを身にまとい利尻岳に挑むのだった、、、
と適当に嘘八丁を並べてみましたが、今回は利尻岳登山のお話です。
さてさてここからが本題です。
泣く子も眠る深夜3時を回った所で本来の目的である登山のスタートとなります。
一応登山ブログの端くれなんでコースタイム紹介しまーす。
3:24鴛泊コース登山口→3:32甘露泉水→4:08野鳥の森(4合目)→5:06第一見晴台(6合目)→
5:36胸突き八丁(7合目)→6:07第二見晴台→6:29長官山(8合目)→7:59利尻岳山頂→9:52利
尻避難小屋→10:49胸突き八丁(7合目)→11:48野鳥の森(4合目)→12:22鴛泊コース登山口
行動時間 8時間58分(休憩時間1時間)
ポン山とか名前が可愛いですね。まずは甘露泉という水場を目指します。
目指すというか2分ほど歩くとすぐに甘露泉水の看板が出てきます。
名前の通り甘みのある美味しい水です。ここで水を汲まないと山頂までは補給ポイントはありません。
利尻ルール
携帯トイレを使う事それが嫌ならオムツを履く事。
ストックにストイックにゴムキャップをつけること。
植物の上に座らない、踏み込まない、煎じて飲まない、衣服を染めない。
頂上までは約5.5kmの道のりです。はりきって行きましょう。
真っ暗ななかを進むので看板くらいしか撮るものはありません。
写真だと明るく見えますが、この時点だとまだヘッデン必要なくらい暗かったです。
スタートから40分ほど歩くと4合目の標識がでてきました。
序盤は緩やかに標高を上げていく感じです。まだまだ足取りも軽快です。
セミの脱け殻を発見、夏ですね〜。
これはヤマハハコという花でこう見えても菊の仲間らしい。
空が朝日に染められて真っ赤になっていく。今日も1日が始まるのだ。
白樺の森を奥へと進んでいきます。
ここで太陽がお目見えです。狙い通りの快晴ときたもんだ!!
予定変更は大成功でした。
下界の方はまだ雲が多く半分くらい雲海のようになっていた。
調べてみたけど雷鳥は北海道にいないそうですが、雷鳥がこの登山道を道案内してくれた事からこの名がついたそうです。
50%モルゲンロートな山体。
北海道は森林限界が本土に比べると早くどんどん木々の背丈が低くなってくる。
徐々にきつくなる傾斜に下を向いて歩いていると頭にごつんと木が当たる。
不意打ちほど痛いものはないです、、、皆さんも要注意です。
私も不意打ちで女性からビンタをくらった事がありますが、本当に星が見えました。
新緑の木々と朝焼けの空の赤と青のコントラストが美しい。
贅沢な景色を横目に一行は進みます。
ところどころ展望が開けるので長い樹林歩きでうんざり登山にならないのもこの山の良い所でしょう。
鴛泊港とペシ岬がしっかり見えますね〜。
これはなんでしょうね?これから花が開くのか?それともこれが咲いている状態??
海を眺めながらの登山、しかもこんな間近に海があるなんて中々に貴重な経験をしている気がする。
雲海の中からひょっこり顔を出しているのはおそらく礼文島でしょう。
もう少し陽が昇ればあの雲海も消えて全貌を拝めるかもしれません。
5:06 第一見晴台(6合目)に到着。
この時点で標高は760mとまだまだ先は長いですね。ようやく残り1000mを切った所です。
山頂はまだまだ見えません。背丈の低い木々の間を抜けていく道が遥か先まで伸びていた。
たそがれてると、蛾のような虫が足に止まったのだが、チクっと刺されました。
痛っ!!虫の襲撃がものすごいですね〜。ブヨの次はよくわからん蛾に刺されるっつうね、、、
見晴台でのんびりしてたらsea-nov氏があんなに遠くに進んでました。
よくわからん蛾にビビりながら私も後を追います。
植生を保護している場所が所々あったりします。
何年後になるか分かりませんが、いつかここも花畑になる日が来るといいですね〜。
トイレブースなので携帯トイレが無いとただの個室です。
そういや入山から下山まで一度もトイレ行かなかったな、、、
トイレ行けない=水をあまり飲まない=下山後水分不足で頭痛になる
この方程式のせいで私は登山後8割頭痛に苛まれます。皆さんはしっかり水分はとりましょうね。
イワギキョウが咲いています。まだまだ高山植物が出てくるのはこれからです。
登山道上の木々の背丈がさらに低くなってきました。
胸突き八丁は名前の通り胸が苦しくなるような道のりでした・・・と言いたいところだが、背丈の低い木々に頭をガンガンぶつけまくったので、頭突き八丁に改名すべきだと思います。
シュムシュノコギリソウ。名前が特徴的なこの花もたくさん咲いていました。
登山道からは島の港町がよく見えます。礼文島はまだまだ雲のヴェールに包まれていますね。
強制頭突き製造マシン搭載のハイテク登山道を腰を屈めながら進んでいきます。
この体勢が結構疲れます、、、
トンネル状になった登山道を登り終えると再び景色が開ける!
どどん!と見えるのは利尻岳ではありません。
島の麓から登るので標高差がありますからね〜。まだまだ先は長い。
ちなみに目の前に見えるピークは長官山です。
再びの青い花が目をひくイワギキョウ。
第二見晴台に到着。標高は1120mという事はあと600m登るわけですね。
再び鴛泊港。時間はまだ6時とようやくお目覚めの人も多いでしょう。
島の人々はどんな仕事をしてるんでしょうね?
sea-nov氏は十八番であるGLAYのTERUのポーズを今日も全力でキメる。
利尻昆布の舞を踊り今年の収穫を祈るというのが島の間で流行っているという話は私が今作りました。
再び、山頂を目指し進んでいきます。
もう覚えましたか?シュムシュノコギリソウですよ。
私の壊れた脳内ではムッシュノコギリ卿というサイコパスの貴族のような名前が頭の中でループしています。
これもイワギキョウかな〜。
山頂に近づくほど岩がむき出した場所が多くなってきます。
6:29 長官山に到着です。あの後ろに見えている山はまさか、、、
どん!これが利尻岳です。かっこいいですね、島の象徴と呼ぶにふさわしい威厳のある山容である。前日に山頂に滞在していた雲も今日はどこかへお出かけのようで良かった良かった。
夏でも日当たりの悪い斜面には大きな雪渓が残っているようですね。
まずは避難小屋を目指して歩きます。長官山の標識に小屋まで15分と書いてありました。
アザミが咲いています。巻機山では驚異のトゲトゲトラップで我々を苦しめていましたが、ここでは視覚を楽しませてくれる高山植物の一つである。
kitasennju-yamabu.hatenablog.com
この紫色の美しい花はリシリブシというそうです。
トリカブトの一種なのでお察しの通り毒があります。
藪漕ぎ風な道をしばらく進みます。これも巻機山で鍛えられた私としては何とも思わないレベル。(実際に藪漕ぎじゃないしねこれ)
利尻岳の小屋は営業小屋ではなく地図上でも避難小屋となっていました。
あくまでトイレブースです。携帯トイレを持参しましょう。
クルマユリが咲いています。北海道にもあるんですね〜、勝手に本州の花だと思っていました。
オトギリソウの仲間であるハイオトギリも咲いていました。
細かい白い花をたくさんつけるオオカサモチ。大きいものはブロッコリーみたいな形をしています。
次のチェックポイントである9合目までは熊笹の生い茂る道を再び進んでいきます。
この辺りから高山植物ラッシュが始まります。
この黄色い花はキク科の花でキオンといいます。大きさも20cm〜150cmと個体差が激しい植物である。
通常は白い花であるオニシモツケ、これはピンク色の個体。
ここでもリシリブシが咲いている。
リシリブシの群生も見ることができました。
そしてイブキトラノオもたくさん見ることができた花の一つ。
花穂がトラの尻尾に似ていることからその名前がついたのはなんとなく分かりますね。
とにかくここが高山植物の宝庫というのは間違いないでしょう。
もうおわかりですね。シュムシュノコギリソウ、今日はこれを覚えて帰ってくださいね。
ピンクのシュムシュノコギリソウも発見しました。
やはり懸念していた通りの崩壊が斜面で発生しています。とても痛々しい姿である。
地面の土も赤くなってきてむき出しの部分が増えてくると山頂が近いんだなと感じてしまう。日光男体山とかがそのイメージ。
イブキトラノオの群生と島を一望できる展望ポイント。
そんな場所が見えてきたら、、、
利尻岳の9合目に到着です。
9合目は地面がむき出しになった広場になっており休憩するには丁度良い場所になっています。トイレブースも設けられています。
ここからが正念場、、、確かに直登といっていいルートを登ってきたのでスタミナの消費が激しいのは間違いありません。
気合を入れ直して山頂へと向かいましょう。
先ほどまでの登山道からは一変して赤土むき出しのガレた登山道を進みます。
崩壊地がここからもよく見えます。
見上げた先も崩壊している部分がよく見えます。
本音言うと我々が登っていることで崩壊が進んでいるというのも事実でしょう。
少し複雑な気持ちである、、、
すっかり海の上を漂っていた雲もなくなり気持ちの良い天気になりました。
虫が多いけどね、、、
ここからが崩壊地の核心部ともいえる道が目の前に広がる。
片側が大きく崩落した登山道、今も崩壊が続いているようです。
登山者が歩ける幅も来年はさらに狭くなっているかもしれません。
火山の噴火によって形成された利尻岳は脆い山肌なうえに厳しい北の風雪などによって崩壊が進んでいるのも原因の一つだそうです。
確かに崩れやすいガレた道がずっと続いている。
崩壊地を越えてもなおガレ場が続く、ここは九十九折に登っていきます。
ここで沓形(くつがた)コースとの合流地点にぶつかります。
沓形コースは難所が多く崩壊地をトラバースする親不知子不知と呼ばれる危険なエリアも通るため上級者向けの登山道となっています。
調べてみると鬼脇コースなるルートもあったようだが、現在は7合目以上は立入禁止となっているようです。
斜面いっぱいに咲くイブキトラノオは圧巻の一言でした。
登山者を照らす光と崩れゆく道に見え隠れする闇。
この山には二つの顔がありました。
登山道には少しでも崩壊を食い止めようという努力がいたるところで見られました。
大変崩れやすい登山道なので注意すべきは落石でしょう。
崩れゆく山肌とは対照的に元気に咲く花々。
これはタカネナデシコという花です。
ねずみ花火が回ってる時のような形状の花ですが、個人的に好きです。
ミヤマアズマギクは危うく通り過ぎそうになってしまう所でしたが発見!
ここで前を行くおばちゃんが落石を落とし、私の横を岩が吹っ飛んで行きました。
正直、この花の撮影をしていなかったら直撃は避けられなかったと思う、、、マジで。
ミヤマアズマギクに命を救われた男、それが私だ!!
登山道脇に黄色い花がめちゃくちゃ咲いている!
ハイオトギリの群生でした。
高山植物の宝庫に一同感動です、、、来た甲斐がありました。
ハイオトギリの中に咲くこの花はエゾウメバチソウといいます。
おもに高山帯の湿った草地や礫地に生える小さな花です。
この標識が見えたら山頂は射程圏内です。
山頂に祠のようなものが見えている。
ただのタンポポやんと思ったそこのあなた!違います。
この花はフタマタタンポポという歴とした高山植物である。本州の山では見る事が出来ず北海道の高山帯でしか見れない何気にレアな花です。
茎が二股に分かれることからその名前がつけられ、タンポポの仲間ではなくフタマタタンポポ属に分類される。
フタマタタンポポを無駄に熱く語ったところで到着です。
7:58 我々は利尻岳の頂上に立つことができました。
このそそり立つチ・・・太くて硬そうな岩はローソク岩といいマグマがが冷えてこのような形になったそうです。
クライマーの方々は登るんでしょうね〜。
うっすらなんですが、礼文島の全景が見えるようになりました。
いつかはあっちも行ってみたい、、、
利尻なので三角点に尻をつけてみました。
祠には扇風機のプロペラのようなものがたくさん刺さっていましたが、これは船のスクリューで航海の安全を祈願する神聖な場所のようです。
山頂にいた同年代くらいのお兄さんは名古屋から来たそうで、同じ百名山制覇を狙うハンター仲間であることが判明、意気投合し一緒に記念撮影。
そのワガママボディを存分に披露したお兄さんはその後も温泉や帰りのフェリーでも出会ったりと何かと縁がありました。元気にしてるかなぁ〜、、、
南峰が先に見えますが崩落が進んでおり危険なため2m低い北峰が一般登山者の頂上となっているそうです。
山頂は景色良し!花もたくさん咲いている!という素敵空間である。
麓から登ってきたためパンパンに膨れたサッポロポテト。
あの日のステーキ味のあの日ってどの日だよ!!とツッコミたくて買っただけですが、偶然にも北海道にはうってつけのチョイスでしたね。
山頂からの眺めを見ていきましょう。
礼文島方面、なんかツバメみたいな鳥が飛んでます。
この崩壊具合は沓形コース方面だと思われる。次回はこちらを歩いてみたいもんだ。
山と海を身近に感じられる場所、それが利尻岳です。
島と本土を往復している?船も見えます。
イブキトラノオとローソク岩と謎鳥。穏やかな陽気の中で山頂の景色を満喫することができました。
これもイワギキョウ。
唯一の心残りがあるとしたらリシリリンドウが見れなかったことです。
咲いてるのを見落としたのでしょう。
またここに来るべき理由が出来ました。沓形コースで登り、リシリリンドウを愛でる!
さてさて、それでは下山を開始します。
ガレ場の下りも登り以上に慎重に進みます。
お花畑になっている斜面を横目に標高を下げていきます。
もう言わないぞ、わかるよね?この花の名前。
避難小屋まで戻ってきました。中は意外ときれいですね。
ここから下るともう利尻岳の本陣は見えなくなってしまう、この景色をしっかりと脳裏に焼き付けて下山します。
実は今日中に島を出なくてはならない。過密な日程を組んでいた我々にのんびりと島を散策している時間は無いのである。
実質24時間も滞在していないという事実、、、もったいない島遊びとはこのことでしょう。
急坂を下る下るぶつける下る、たまに避けるまた下るそしてぶつける。
7合目に戻るころには木にぶつかりすぎてお互いの顔が分からなくなるくらい腫れ上がってしまう、、、訳ないだろ。
まぁ、たんこぶの一つや二つ出来てもおかしくないけどね。
ここも木の枝を避けながら進んでいきます。
ツバメオモトの花は咲き終わっていました。瑠璃色の実が美しい。
木でできた橋が出てきたらかなり下ってきた証拠です。
3合目の看板がお出迎え、ポン山という響きが好きだが今回は寄らなかった。
甘くて美味しい天然水を提供する甘露泉水まで戻ってきました。
冷たい水が、乾いた喉を潤し歩き疲れた体に染み渡ります、、、なんて上品な飲み方はせずがぶ飲みしました。
野営場まで戻ってきたが夜の景色しか見ておらずこんな感じだったのかと困惑。
12:22 利尻岳登山完了である。
まずは北海道の旅、待望の1座を無事に登ることができました。
登山後のご褒美でお馴染みの炭酸飲料でつかの間のひと時を楽しむのも登山の醍醐味でしょう。
といってもフェリーの時間もあるので早々に撤収します。
どんなに急ごうと温泉は必須項目なので前日と同じく湯泳館さんにて汗を流しました。
フェリーの手続きを無事に済ませ、利尻を後にします。
短くも濃厚な時間を過ごすことができたと思います。しかしながら島をゆっくり散策できなかったのは残念なので、必ず再訪したいと思います。
出航するフェリー、離れていく利尻島を三人はずっと眺めていた、、、
船上から見える利尻岳の全貌がかっこいい、いつまでも登山を楽しむことができるといいですね。
しばらくすると船上に無銭乗船している悪い子がやってきました。
こいつも利尻岳をのんびり眺めながらクルージングを楽しんでいるのだろうか。
無銭乗船は気まずいので、飛んで行ったと思ったら帰ってきたの図。
暇つぶしの相手をしてくれたサービス精神旺盛な鳥さんに感謝ですね〜。
ということで利尻島を出発した我々は次なる山を目指して再び走り出します。
北海道をぐるりと周る我々の夏休みはまだまだ続きます。
◎まとめ◎
利尻岳は美しい高山植物の宝庫という光を浴びている面と崩壊を続ける登山道の痛々しい姿という闇の面という二面性のある山だった。
とはいえ、山頂から見える景色は絶品である。
そこには島登山でしか味わえない海を身近に感じる登山であった。遥か遠い水平線を眺めながら歩ける山はそんなに多くないでしょう。
利尻固有の植物もたくさんあるので是非機会があれば訪ねてみてください。
利尻岳以外も楽しめるスポットがたくさんありそうなので利尻島に行こうという方は決して24時間以内に島を出るような愚行はしないほうがいいですよ笑
利尻岳登山 おしまい。
北海道の旅はまだまだ続く。