【甲斐駒ヶ岳】〜黒戸尾根日帰りピストン〜絶体絶命サバイバル?山中に20時間彷徨える蒼い弾丸ツアー
どーもどーもやけんでございます。
2017年7月15日に甲斐駒ヶ岳に登ってきました。
やっぱり甲斐駒ヶ岳といえばテント泊デビューするにはもってこいの北沢峠をベースキャンプにした仙丈ヶ岳とセットでお得に登ろうキャンペーンがお馴染みですが。
この甲斐駒ヶ岳に泣く子も黙るどころか白目をむいて失神してしまいそうなコースがあるのをご存知だろうか?
そうです、日本三大急登の一つと称される全国のドMどもを震撼させた黒戸尾根コースである。
私には縁のないコースだと思っていた黒戸尾根コース、ひょんな事からノリで登る事になってしまった運の悪い男、やけんの2017年しんどかった登山大賞に選ばれた登山記録である。
甲斐駒ヶ岳は全国にちらばる駒ヶ岳の最高峰で標高は2967m。
南アルプスの北部にあり、南アルプスの女王と称される仙丈ヶ岳とセットで登られる事が多い。
私もセットで登る予定だったのだが、気がつけば黒戸尾根を歩いていた、、、
ドMの血がそうさせるのか?そうなのか?
時はさらに遡る事2017年7月1日。
私と会社の同僚であるノッティは八ヶ岳の最高峰である赤岳を大雨の為、登山口に立つ事なく撤退を余儀なくされていた。(普通に登っている人いたけどね、、、)
諏訪湖で男二人で湖を撮影するというとても正気とは思えない行動をとった屈辱は二人の心に深い影を落とした。
暗黒面に堕ちた我々は、赤岳よりもっとハードな所に行こうぜ!と甲斐駒ヶ岳の黒戸尾根に目をつけたのだった。
「黒戸尾根上等、そこんとこヨロシク!!」
我々は甲斐駒ヶ岳に喧嘩を売ったのだ、結果はフルボッコにされました、、、
2017年7月15日午前3時頃に尾白渓谷駐車場へとやってきた我々はすぐに登山の準備にとりかかる。
安定の0時間睡眠登山はドMの世界では標準装備である。
闇夜の中に立つカオナシにどことなく似た像が立っている。
これから無謀な戦いへと進む我々を不気味な表情で見つめていた、、、
さっそく登山届けを記入し、提出を済まし登山開始。
この時点での時刻は午前3時40分、再びここに戻ってきたのが午後23時40分。
なぜこんな事になった?それには色々なトラブルが重なったのもあった、、、
本当に本当に長い道のりのスタートである。
地図をチェックすると、まずは駒ヶ岳神社方面に歩きそこから橋を渡るようです。
目の前に看板が、右へ行くと懐かしき日向山への道が。
あの山は山頂が白砂のビーチのようで、スイカ割りやビーチバレーがしたくなってしまったのを思い出します。
kitasennju-yamabu.hatenablog.com
少し神社付近で道がわからずウロウロしましたが、橋を発見!!
「き・・きやがったぜ黒戸尾根登山道。」
本日のコースタイムを紹介します。表題どおりのあんぽんたんコースタイムです。
3:40黒戸尾根登山口→5:46笹ノ平分岐→7:57刀利天狗→8:54五合目小屋跡→10:10七丈小屋→12:10八合目御来迎場→14:28甲斐駒ヶ岳山頂→19:02刀利天狗→23:40黒戸尾根登山口
行動時間20時間 休憩時間不明(多分1時間も休んでない)
いきなり黒戸尾根が牙をむいてきます。よそ見厳禁です!!
以前丹沢登山をした時に前方不注意で木に額を強打し、グロッキーになった男を私は知っている。
先頭を歩いていた男が前方に木があると言ってくれなかったせいだと激怒し、鍋割山荘の鍋焼きうどんを奢らせた男を私は知っている。
額強打が原因か?それとも賞味期限が半年過ぎたゼリーを食べたのが原因か?
下山時に体調不良を起こし鍋焼きうどんを吐いて、鍋焼きうどんもう一回奢れよと言った男を私は知っている。
とにかく危険箇所は仲間に知らせて共有しましょうね。(食事中の方すいません)
あ、私じゃないですよこれ。
木の根が地面を這っているので転倒注意ですね。
30分もするとやっと明るくなってきました。といっても写真が明るいだけで、実際はまだまだヘッドライトは必要なレベルである。
てかこんな所を歩いていたのか、、、
ひたすら九十九折に登っていくのだがこの道がクッソ長いです。
このコース日帰りは標準コースタイム15時間とん?と耳を疑う長さですが、そんな鬼畜ロードへ挑むくらいだから歩いている人は老若男女問わず、健脚者揃いだった。
正直この日このコースを歩いていた登山者の中で最弱は我々のはずです。
小さい子供に普通に抜かれたし、、、
体感としては100人くらいに抜かれたと思います。
センジュガンピはナデシコの仲間でこれはまだ咲き始めですね。雄しべが目立ってますが育つと雌しべが伸びてきます。
まだこの時点は花を愛でる余裕があったな、、、
そういえばノッティの格好が斬新すぎて唖然としました。
しばらく志◯田景樹だと思って登っていました。
急登が続きますが、まだまだ序盤である。
果てしなく続く先の道のりを考えて私はペースを抑えながら登る。
一方ノッティは私より若く体力もありガンガン登っていました。
ざっくりすぎでしょ!!!スタート→現在地→ゴールじゃねえか!!!
ここが笹の平らしい。
甲斐駒ケ岳まで7時間だと?簡単に書いてくれるぜ、、、
黒戸尾根はひたすらに急登が続く地獄のような道だと思っていたが、このように平坦な歩きやすい道も出てきたりします。
しかし我々は知る由もなかった、、、まだ地獄の門にすらたどり着いていないことに。
石碑と石像が登山道沿いに置かれている。夜に通ったら不気味なんでしょうが、あの時の我々には道を示してくれる神のような存在だったかもしれない、、、
八丁登りと呼ばれるこのエリアは急登が続く登山者には辛くしんどい道のりである。
もちろん写真のような急ではない場所もありますが、急登の九十九折に登っていく無限地獄は日本三大急登の名に恥じない過酷な道です。
地獄の一丁目を曲がるファンキーボーイノッティ。
無限急登地獄を越えると針山のようにそびえる名物エリア「刃渡り」の登場である。
地図上では危険マークが記されています。ですが思ったより岩の幅もあり鎖もしっかりしているのでここでブレイクダンスでもしない限り滑落はしないでしょう。
進行方向右手側がかなり開放的になっていて見えているのは二百名山の鋸岳のある稜線でしょうか。
一方左手からはガスがすごい勢いで上がってきておりすでに後方がガスに飲み込まれ始めていた。
刃渡りを振り返るとこんな感じで思っていたより歩きやすい。
正直危険マークが付くほどのレベルではないかな、、、
厳しい登山道に咲く花はシャクナゲですね。
この花も登山をする者にとってはお馴染みの高山植物でしょう。
刃渡りはこれで終わりと思ったら似たような刃渡りが再び登場。
これも難なく突破します。
刃渡りを越えて再び急登かと思いきや、ただの急登ではございません。
ロープ、鎖、ハシゴ、丸太、吹矢、トゲ天井とあらゆるギミック満載の登山道が開始します。
後ろ2つは嘘です。
写真だと傾斜が伝わりにくいですが、その辺の鎖、ハシゴ場よりかは難易度は高い気がします。
私は楽しいですが、ノッティは「まじっすか、、、」
どうやら鎖場はあまり慣れていないらしい。
それでも鎖やロープを頼りに天然のアスレチックコースを越えていきます。
このコースきついだけあって修験者の歩く道だったのでしょうか?
祠や石仏などが結構点在していました。
地図上にも明記されていますが、刃渡りを越えた最初のチェックポイントである刀利天狗までやっとこさたどり着くことができました。
この時点では概ねコースタイム通りに歩けていました、、、
山頂まではまだ4時間半程かかるようで、その後下山しなければならないってことは、、、えーっと考えるのは山頂に立ってからにしよう。
地図を見るとコースは載ってないですが、黒戸山の山頂の横を通過している模様。
黒戸尾根の名前の由来がこの黒戸山なんでしょうね。
黒戸山を下ると甲斐駒ケ岳と黒戸山の鞍部に出ます。
広場のようになっているのですが、ここには昔5合目小屋という100年以上の歴史ある小屋があったそうですが、小屋番さんがお亡くなりになって小屋が荒廃してしまい今となっては5合目小屋跡と地図にも明記され、祠と石仏が静かにたたずんでいる。
5合目より先はさらにハシゴ場、鎖場が連発で襲いかかってきます。
黒戸尾根って急登がひたすら続くだけだと思ってたわ、、、
ノッティは「これ帰りは下るんですよね?まじかぁ、、、」
そうなるよねぇ〜。下りの方が危ないもんね。
登ってきた大人のアスレチックコースは高度感も半端ないっ!!
危険マークは刃渡りじゃねえ、、、こっちじゃねえか!!!
無慈悲に続く急登と鎖、ハシゴにカメラをコツコツと岩にぶつけながら登っていく私。
今度は吊り橋が登場!片側はロープ貼ってますが、反対側は谷底へGO!できる仕様になってます。
聖剣エクスカリバーか草薙の剣なのかは知らないが、熊と闘りあえそうな武器が置いてありました。
5合目から1時間程歩くと黒戸尾根コース唯一のオアシス、七丈小屋に到着しました。
ガリガリ君が地上の5倍近い相場で売られているのは仕方のないこと。
七丈小屋は2つあるんですが、こちらは七丈第一小屋で第二小屋は少し歩くとあります。
山頂へはここから2時間半かかるので、早めの昼飯をいただくことに。
なんと、山小屋では珍しい湯切りが必要なペヤングソース焼きそばが売ってるじゃあないですか!!!
これには自称ペヤンガーのノッティと私も大喜びで注文。
ノッティはかやくを湯ぎった後にかけてカリカリを楽しみながら食べるそうです。
世の中、変わった人がいるもんですね(白目)
腹ごしらえも済んだので山頂へのアタックを開始します!!
七丈第二小屋の脇にあるハシゴを登ってテント場に向かいます。
このテント場の奥に登山道があるのですが、よくわからずウロウロし無駄に時間をロスしました。
テント場に行くのもなかなかにアスレチックですね。
このコースを歩くくらいなんだからこんなの当たり前か、、、
テント場、ここよりさらに上を目指すと登山道があります。
次のチェックポイントである八合目御来迎場を目指します。
1枚岩のような場所を登ったりもしました。
ただでさえ足の消耗が激しいうえに全身を使い登らなければいけない、、、
タフなルートだわ本当に。
七丈小屋で今日はおしまいな人達もいたし、我々も七丈小屋に泊まるべきだったのかもしれない。
男はみんな大好きな山の上に剣がささってるやつ。
木々の背丈も低くなり森林限界がやってきましたが、我々の体力も活動限界になってきました。
展望限界も併せてやってきましたのでトリプル達成ですおめでとう。
ガスの隙間から僅かに見えるのは北杜市でしょうかね。
かなり低い所から登り始めているので、がっつり登った感はあるのにまだ街が近い。
登山道が徐々に砂が剥き出しの斜面へと変化しました。
この先の下山を考えると足に余力を残しておかないと大変なので負担がかからないようにゆっくりと進む。
ノッティは相変わらずにアスレチックゾーン以外は速い。
大きな鳥居でも建っていたのだろうか、ここが八合目御来迎場である。
肝心の甲斐駒さんはガスの中。
しかし鳳凰三山ががっつり見えたのが救いだった。尖っているのがオベリスクか!!
あそこも日帰り三山縦走はドM心をくすぐるファンキー登山を楽しめるそうです。
ツマトリソウは尖った花弁が特徴的ですね。
なかなか面白そうな鎖場が登場します!
鎖はとある御夫婦が寄贈されたもののようです。
この先から一気に鎖場の難易度が跳ね上がります。
黒戸尾根はバリエーション豊富で飽きませんね!ここまでスリリングなコースだったなんてね、、、マジで休んでる暇がない。
イワカガミも良く見かける高山植物ですね。
下山時は全く花を見る余裕など無くなってたな、てか真っ暗闇だから見えるわけないけどね〜。
花崗岩の白い地面が見えてくるとゴールも近い。
あともう一踏ん張りだ。
ハクサンイチゲも咲いていました。メジャーな高山植物が多い山ですね。
まだ微かに残る青空の可能性を信じ前へ進む。
ノッティも必死で岩場に喰らいつく、難易度は八海山の鎖場とどっこいどっこいだと個人的には思います。
奇跡が起こったとすれば、甲斐駒ケ岳山頂付近にうっすらと虹が架かっていたことでしょうか。
今度は2本の剣が刺さった岩のお山。
スリリングな空中散歩が続く。まだ山頂に着かないのか、、、
ご飯の上に箸を刺しちゃダメって子供の頃に習ったでしょうが!!
山頂直下は岩がゴロゴロして登りづらい。
およそ自然に創られたとは思えない形をした岩を発見。
白き砂漠には多数の奇岩。
前方に何かがある!
駒ヶ岳神社がありました。最近建てたのか、かなり綺麗だった。
山頂まで5分、、、やっと折り返し地点。
14:28 甲斐駒ケ岳山頂に到着しました。
8時間のコースタイムを11時間かかってるじゃないの、、、
今年一番心から床ぺろできました。
あの祠を開いて中に入ると滑り台があって駐車場まで一気に戻れないだろうか?
そうです。ここから本当の地獄の始まりである。
来た道を戻ります。もちろん下りの鎖場は登り以上にスピードが出ません。
この辺りから私は何度も地図を見て駐車場までのコースタイムを計算していた。
七丈小屋で1泊して帰るのが良いのでは?と思った私はノッティに提案してみましたが、しょうもない理由で却下になりました。
本当にしょうもない理由なのでここでは書きませんが、この人ぶっとんでるなと思いました。
暗くなる前に刃渡りだけは突破しないと危険なので、悲鳴をあげる体にムチを打って進みます。容赦のない鎖とハシゴのラッシュを乗り越えて進んでいきます。
我々は七丈小屋で二つのミスを犯します。
一つは地図のコースタイムを1時間半程短く見誤ったこと。
もう一つは100円で汲み放題だった水をケチったこと。
後者はのちにじわじわと我々を苦しめるのであった。
はげしい鎖場が一段落ついたところでトラブル発生、ノッティの足が限界を迎えスピードが格段に落ちます。
下山時の足の余力を残していなかったので足の裏の皮がベロリと剥がれて歩くたびに激痛が走るそうです。
こりゃ、マジでやばいな、、、
上がらないスピード、無情にも薄暗くなっていく登山道。
時刻は19時半とギリギリ日没寸前で刃渡りに到着。
後は、九十九折の登山道を下山するだけ。
ここからしばらく写真が無い。そんな余裕も無いし、暗闇じゃ何も撮れない。
起こった出来事を長文になるが書き記そう。
まず更なる悲劇はノッティがヘッドライトを忘れたことである。
牛歩状態のノッティの足元を私が照らし、先へ少し進みまた足元を照らすという行動を繰り返しゆっくりと進む。
常にヘッドライトの周りを3匹ほどの蛾がまとわりつきストレスが爆発。
お互い八つ当たりできる相手がいないので二人で口喧嘩しながら下山。(お互い分かって喧嘩してたので下山後、別の登山とか普通に行ってます。)
喧嘩してても赤いテープや石仏を見つけると登山道合ってるよ!!と二人ではしゃぐ。
しばらくして水の残りが僅かとなる。
もうどれほど歩いただろうか、、、やっと出てきた標識に登山口まで1時間半と書いてある。このペースじゃ3時間はかかるだろう。
ノッティがここで覚醒、足が取れてもいいからとスピードアップ。
逆に、私の水が無くなり余裕が無くなってくる。
それからかなりの時間歩いたであろう、、、沢の音が聞こえて来る。
「よっしゃ!!尾白川キター!!!」と喜ぶのも束の間、すぐに沢の音が遠ざかる。
絶望を味わいつつも歩を止めることはできない、ひたすら真っ暗闇の中を歩くと再び沢の音が!しかしまた遠ざかる。
これを何度か繰り返した所で喉の渇きで私は登山道に腰をおろした。
沢の音がかなり近い、というより目の前に沢があるのが分かる。
ノッティが水をゲットしてきますと、周辺の散策を開始し、しばらくして戻って来た。
私はスマホの電波が繋がったので、家族に「生きてるけど帰るの遅くなるわ」と電話をしていました。
ノッティが汲んできてくれた尾白川渓谷の水。
「これ飲めんの?」に対し、ノッティは「死ぬよりかはマシでしょ。僕は2リットルがぶ飲みしましたよ!」
背に腹は代えられないのでがぶ飲みしました。美味い、生きかえるわ、、、
ノッティがもう一度水を汲んできますと闇に消えたが、全然戻ってこない。
さっきまで沢の方で煌々と光っていたスマホのライトも見えなくなった。
まさか沢に流されたのか?慌てた私は急いで沢へと走った。(全然うごけるじゃねーか)
ノッティ「はい?」
どうやらスマホの充電が切れそうなのでライトを消して水を汲んでいたらしい。
ふと上を見上げると吊り橋が見える、、、なんと登山口はもうすぐそこだったのだ。
23時40分 登山完了。長く辛い1日が終わろうとしていた。
私の登山史上、初めて温泉に入れず帰宅することとなった。
帰宅後、すぐに別件の旅行の予定が入っていたのですぐに準備して出発しましたが、行きの車はほぼ寝ていました。
完全になめてましたね、二人で大いに反省することとなった今回の登山であった。
◎まとめ◎
甲斐駒ケ岳は、黒戸尾根ルートで行くと急登のみでは無く、激しい鎖やハシゴが連続するハードな登山を楽しむことができます。
しかし往復15時間のコースタイムが設けられている日帰りするにはしんどい道のりでもあるので健脚の方にしかお勧めはできません。
ヘタレのドMが歩いたら20時間かかるので素直に小屋泊をしましょう。
意識高い系の登山者の方から怒られそうな今回の登山ですが、甲斐駒ケ岳を黒戸尾根で日帰りチャレンジしたいけどどうなのよ?との疑問に少しでも参考になればと思います。
ノッティは帰りの車で眠そうにしてたので、気にせず寝ていいっすよと言ったら2秒でいびきかいていて、のび太を軽く超えていました。
甲斐駒ケ岳黒戸尾根日帰りピストン 〜おしまい〜